「まずは覚えろ、慣れろ」と「まずは理解」、どちらが先!?
先日、塾長さん同士で情報交換をする場があり、指導法についていろいろな意見をうかがってきました。
勉強のさせ方ひとつとっても、塾の数だけ考え方があります。
その中で、こんな声がありました。
「理論はあとからで良い派です。まずは覚えろ慣れろ染み込ませろ派。」
なるほど、と思いました。
同時に、では「理解が先」と「量が先」、どちらが先なのだろう、とあらためて考えるきっかけをいただきました。
多くの意見を聞くうちに、自分の中のモヤモヤが少しずつ形になってきたのです。
今日は、そんなお話です。
量で伸びる人、理解で伸びる人!?
「まずは慣れろ」をすすめる先生方は、きっと、量をこなすうちに自然とコツをつかんでこられた方々なのだと思います。
たくさんの例にふれるうちに、決まりごとを自分で見つけ出してしまう。
こういう学び方を「帰納(キノウ)」と言います。
反対に、先に決まりごとを分かってから、それを一つひとつの問題に当てはめていくのが「演繹(エンエキ)」です。
生徒の指導を長年していると、生徒たちの思考タイプは演繹型と帰納型とに大きく分かれていると感じています。
量をこなすうちに勝手に伸びていく子がいる。
いっぽうで、同じだけ量をこなしても「なるほど」にたどり着けず、丸暗記のまま止まってしまう子もいる。
帰納が得意な先生方にとって、「まず慣れろ」が正解に見えるのは、とても自然なことなのですね。
基礎学で300点を超えたことがなかった、じゅくちょー!?
では、じゅくちょー自身はどうだったのか。
中学時代、基礎学力テストで300点を超えたことは一度もありません。
500点満点で、です。
量をこなしても、「なるほど」がやって来ない。
覚えたはずのことが、少し形を変えて出されると、もう手が止まる。
決まりごとが分かって、理屈が分かって、
納得してからはじめて手が動く。
完全に、演繹タイプでした。
そこから死に物狂いで勉強して、阿南高専に合格しました。
当時の高専の入試は、マーク式ではなく記述式。
県立高校の入試よりも、かなり難しい問題でした。
だからこそ、量だけでは置いていかれる子の気持ちが、じゅくちょーには手に取るように分かるのです。
「みんなと同じだけやりよんのに、なんで自分だけ分からんのやろ?」…これ、当時のじゅくちょーそのものです。
考えを整理してみたら、地頭ではなく「下地」の差だった!?
情報交換の場から帰って、考えを整理してみました。
教育心理学に「熟達化反転効果」という考え方があります。
その分野の知識がまだ少ないうちは、はっきりした説明や、解き方の見本を見せることがよく効く。
ところが知識が増えてくると、同じ説明がかえって邪魔になり、演習のほうが効くようになる、というものです。
つまり「理解先行が向く/量先行が向く」の違いは、生徒の気質というより、その単元での既有知識の量で決まっている部分が大きいということです。
地頭型と呼ばれる生徒は、実は関連知識や語彙を多く持っていて、量から規則を引き出す土台がすでにある、という見方もできます。
これ、教室にいると本当によく分かります。
英単語はどんどん量で覚えていける子が、古文の助動詞になったとたんに止まってしまう。
同じ子なのに、です。
「この子は帰納型だから」と生まれつきの型で決めてしまうと、こういう姿が説明できません。
ちなみに「視覚型の子には図で、聴覚型の子には耳で教えると伸びる」という学習スタイルの話も、検証してみるとほとんど裏づけが出ていないそうです。
子どもに型のラベルを貼ってしまうのは、ちょっと危ないのですね。
「地頭」については、「地頭が悪いから」と決める前にという記事でも書いています。
それでも「量」は欠かせない!?
とはいえ、「まずは慣れろ」には、はっきりした正しさがあります。
分かっているだけでは、試験時間内には解けません。
手が勝手に動くところまでいくには、繰り返すしかないのです。
英語だって、文法の説明を聞いただけで話せるようにはなりませんよね。
例えるなら、地図と散歩の関係です。
街を歩き回るうちに頭の中に地図ができる人もいれば、先に地図を見てから歩いた方が迷わない人もいます。
でも、地図をいくら眺めていても、実際に歩かなければ道は覚えません。
料理も同じです。
レシピ通りに何十回も作るうちに「だからこのタイミングで塩なんだ」と気づく人もいれば、先に理由を聞いてはじめて手が動く人もいます。
ただ、理由だけ聞いて一度も作らなければ、料理は上手くなりません。
じゅくちょーも、決まりが分かったあとは、ひたすら量でした。
高専に届いたのは、理解と量、その両方があったからなのです。
暗記だけで走ることの限界は、暗記型で乗り切るには限界が?!にも書きました。
『つばさ』の取り組みを、あらためて見つめ直してみると!?
そうして、自分の塾でやってきたことを振り返ってみました。
すると、『つばさ』では「慣れか、理解か」のどちらかを選んでいたのではなく、「順番」を大事にしていたことに気づきました。
- ①最初に、必要最低限の決まりだけを短く伝える
- ②あとは例題と演習で、しっかり量をこなす
- ③こなした後に「今日のポイントを一言で言うと?」と、本人に言葉にしてもらう
- ④言えたら、次の量へ進む
③で言葉にできない子は、量がまだ「分かった」に変わっていないサインです。
逆に、量から自然にコツをつかんでいた子も、ここで言葉にすることで、なんとなくの感覚がはっきりした知識になります。
教科で言えば、英単語や古文単語、漢字は量が先で構いません。
古文の助動詞の見分け方や、英文の文型の判断は、最小限の決まりを先に渡してから量に入ります。
ここを「慣れろ」だけにすると、かつてのじゅくちょーのような子が崩れてしまうのです。
言うのは簡単、やるのは大変!?
…と、きれいにまとめましたが、正直に言うと、これが現場ではなかなか難しいのです。
まず、「必要最低限の決まり」がどこまでなのかを見極めるのに、かなりの準備が要ります。
説明しすぎると量の時間が減りますし、足りないと結局、丸暗記に戻ってしまいます。
それから、③の「言葉にしてもらう」時間は、確実に進度を圧迫します。
受験までの残り時間を考えると、ここを削りたくなる誘惑とは、いつも戦っています。
さらに、生徒一人ひとり、しかも単元ごとに「この子は今、どっちが先か」を見極めないといけません。
講師の見る力が、まるごと問われるわけです。
じゅくちょー自身も、まだまだ手探りです。
それでも、量だけで置いていかれる子を、一人でも減らしたい。
その子は、かつての自分だからです。
「まずは慣れろ」も「まずは理解」も、どちらも半分正解。
大事なのは、目の前の子が、今どちらの入り口に立っているかを見ることなのでしょう。
お子さんが今どちらの入り口に立っているのか気になる方は、読解力チェックから試してみてくださいね。
ちゃん♪ちゃん♫
この記事を読んだ保護者の方へ
徳島国語英語専門塾つばさは、徳島市で小学生(小4~小6)から「読解力」を育て、基礎学力テスト・上位公立高校受験を経て、大学受験まで一貫指導する専門塾です。
