じゅくちょー

「うちの子は地頭が悪くて」。そうおっしゃる親御さんに、私はまず一つ、質問をお返ししています。

結論から言うと、「地頭」という一つの能力があるわけではない、と私は考えています。親御さんが地頭と呼んでいるものを、具体的にどんな思考力なのかまで分けてみると、そのほとんどは、やり方しだいで高められる部分です。そして、まだ手をつけていないだけの部分です。

「地頭が悪い」と言われたとき、教室で起きていること

面談で、こんな言葉をいただくことがあります。

「上の子は放っておいてもできたのに、この子は地頭が違うみたいで」

「私も夫も理系じゃないので、たぶん地頭の問題なんです」

親御さんは、責めているのではありません。長く見てきたからこその、あきらめに近い実感です。私はその実感を、まず受け取ります。そのうえで、一つだけ質問をお返しします。括弧の中は、この質問に込めている意図です。

「地頭とは、具体的に何がどのようにできる思考力のことを指しておられますか?(親御さんの考えを聞いた後)なるほどですね。では、その思考力の部分は、具体的にこのようにすることで高められることをご存知ですか?」

「地頭」という言葉は、便利です。一言で片づきます。ただ、一言で片づいた瞬間に、お子さんの中のまだ動かせる部分まで、まとめて動かせないことになってしまいます。

「地頭」を分けると、何が見えてくるのでしょうか

親御さんに質問をお返しすると、答えはたいてい、具体的な動作に変わっていきます。

  • 文章を読むと、途中で何の話かわからなくなる
  • 計算はできるのに、文章題になると手が止まる
  • 昨日覚えたはずのことが、翌日には出てこない
  • 問題を解いたあと、なぜ間違えたのかを自分で言えない

こうして分けてみると、それぞれには、すでにやり方があります。文章の骨組みを見つける練習。答えを見る前に思い出す練習。間違いの種類を分ける練習。どれも「才能」ではなく、手順です。

じゅくちょー

「地頭」を分けた先には、たいてい手順が一つあります。才能の話は、そこでいったん終わりにできます。

ここで、一つの事実をお伝えしておきます。

東大に合格した学習法の発信者の考え方を分類すると、その中で繰り返し語られていたのは、「地頭という魔法の能力はない。地頭がよく見える人は、小さいころから訓練を積んでいるだけだ」ということです。

結論は、教室で長年生徒指導をしていくなかで見てきたものと同じでした。ただし、そこから先の進み方は、『つばさ』と少し違います。それは後半で書きます。

『つばさ』では、最初に何をするのでしょうか

言葉で「伸びます」と言うだけでは、親御さんもお子さんも、安心はできません。ですので『つばさ』では、最初の面談で、次のことをしています。

(本人の学力カウンセリングを面談にて行った上で)最も伸びやすそうな教科と単元を体験授業中に提示し、すぐに伸びて解けるようになることを実感してもらう。

学力カウンセリングとは、面談でお子さんのいまの学力を、教科と単元まで分けて見立てる、『つばさ』の最初の面談です。

なぜ、いちばん伸びやすい単元から始めるのか。理由は単純です。「やればできる」は、言葉で伝えるものではなく、本人が体験で手に入れるものだからです。一つ解けるようになった経験は、次の単元へ向かうときの、「やったから、できたんだ!」という本人の中の根拠になります。

今日、ご家庭でできる一つのこと

塾に来る前に、できることがあります。

「地頭」という言葉を、一度だけ、具体的な動作に言い換えてみる。

「うちの子は地頭が」と思ったら、その続きを「文章を読むと、途中で止まる」「覚えたことが、翌日出てこない」のように、目に見える形にしてみませんか。言い換えた先には、たいてい、やり方の決まっている手順が一つあります。

言い換えるだけで、何かが解決するわけではありません。ただ、あきらめの言葉が、取り組める言葉に変わります。その差は、お子さんが親御さんの顔を見るときに、はっきり伝わるものだと私は感じています。

伸びないときは、どこを見るのでしょうか

やり方を伝えても、伸びないことはあります。そのとき、私が見ているのは「努力が足りない」かどうかではありません。

具体的な伸びる方法を生徒には伝えるようにしています。伸びていない事実や演習によるミスが事実として出た場合、伝えた方法の何ができて何ができていないか、どのように取り組みどのような部分ができていないか、質と量のバランスが崩れている部分や偏っている部分を指摘するようにしている

「才能がない」と「努力が足りない」は、実は同じ言葉です。どちらも、本人の中の何かを責めて、手順を見ていません。『つばさ』が見るのは、伝えた方法のどこができていて、どこがまだなのか。質と量のどちらに偏っているのか。そこまで分けると、次に触る場所が決まります。

人は変われる、と言い切ってよいのでしょうか

『つばさ』は、アドラー心理学の「勇気づけ」を土台にしています。アドラー心理学は「人はいつからでも変われる」と語ります。ただ、私自身の実感は、もう少し慎重です。

人が変わるということは、本質的にはあまりないことだと私は考えています。しかし、成長はできることは間違いのない事実です。成長することで視野が広がり、思慮が深くなることで、人間的に成熟していくのだと感じます。短所や弱さを、長所や強みで見えづらくするようなイメージです。

「地頭が悪い」と決めてしまうことと、「人は変われる」と言い切ってしまうことは、方向は逆でも、どちらも本人を一言で片づけています。『つばさ』が見ているのは、その中間です。短所が消えるのではなく、長所が育って、短所が目立たなくなっていく。その過程を、教科と単元に分けて、一つずつ積んでいきます。

愚直な暗記を、バカにしない子が受かっていく

最後に、私がこの仕事で見てきた、いちばん動かない事実を書きます。

結局のところ、愚直で泥臭い暗記をやり切った生徒が、合格している。愚直で泥臭い暗記をしなくとも合格する生徒だけが、地頭が良い生徒と呼ぶに相応しい。借金を毎月ちゃんと返済するためには、借金をしないようにすればよい、という言葉がある。これは、謎かけのように聞こえるが本質的なことである。借金を毎月返済できる人は、そもそも借金をしないように備えて責任感を持って生きているタイプの人であり、借金をしてしまうタイプの人は、備えることをせず責任感が足りないような生き方をしているから返済が継続してできないのである。受験勉強における暗記も、よく似た側面がある。愚直で泥臭い暗記をバカにせず、取り組めるタイプは合格する。反面、タイパやコスパばかりを重視するタイプは、そもそもの暗記の重要性を蔑ろにしがちであることから、結局のところ受験勉強における最重要の部分の基礎基本がおそろかになり、伸びずに不合格となってしまう。

「地頭がいい」と呼ぶにふさわしい子は、本当にごく一部です。そして、その一部でなくても、合格している子はたくさんいます。愚直に積んだ子です。地頭という言葉は、その子たちが積んだものを、見えなくしてしまいます。

じゅくちょー

お子さんが今日、机に向かったなら、それは才能の話ではなく、自分との約束を一つ守った、という事実の話です。私は、その事実のほうを数えていきます。

お子さんの「いま」を、分けて見てみませんか

「地頭」の中身を分けて見立てるところから、『つばさ』の面談は始まります。まずは、読解のつまずきがどこにあるかを見る読解力チェック(無料・月5名)の内容を見るところから、はじめてみませんか。『つばさ』の考え方の全体はつばさ式読解メソッドの紹介ページにまとめています。

よくいただく質問

地頭は遺伝で決まるのではありませんか

遺伝の影響がないとは言えません。ただ、面談で「地頭」と呼ばれているものを分けていくと、そのほとんどは、読む・思い出す・間違いを分ける、といった手順の話になります。手順は、いまからでも変えられる部分だと私は考えています。

何年生からなら間に合いますか

学年で線を引いてはいません。最初の面談で、いま最も伸びやすい教科と単元を見立て、そこから始めます。早いほど積める量は増えますが、遅いから始められない、ということはありません。

体験授業では何をするのですか

面談での見立てをもとに、いちばん伸びやすい単元を体験授業の中で扱います。その場で「解けるようになった」を本人が実感することを、最初の目的にしています。


参考文献

  • Dweck, C. S. (2006). Mindset: The New Psychology of Success. Random House.
  • Blackwell, L. S., Trzesniewski, K. H., & Dweck, C. S. (2007). Implicit theories of intelligence predict achievement across an adolescent transition. Child Development, 78(1), 246-263.
徳島市で「読解力」を育てる国語専門塾つばさ

この記事を読んだ保護者の方へ

徳島国語英語専門塾つばさは、徳島市で小学生(小4~小6)から「読解力」を育て、基礎学力テスト・上位公立高校受験を経て、大学受験まで一貫指導する専門塾です。