じゅくちょー

家では解けているのに、テストでは最後の大問まで手が回らない。お子さんに、覚えはありませんか?

「うちの子はマイペースで、テストになると時間が足りないんです」。

教室で、何度もいただいてきたご相談です。家ではじっくり考えて正解できる。それなのに、答案の後ろのほうは白いまま返ってくる。もったいなくて、じれったくて、つい口を出したくなる。

結論から言うと、テストで時間が足りない一番の原因は、頭の回転ではなく読む・書く・決めるという三つの動作の慣れです。この三つは練習で伸びることが、研究で繰り返し確かめられています。マイペースな性格を、直す必要はありません。

なぜ「わかっているのに、時間が足りない」のでしょうか

心理学では、「わかる力・考える力」と「処理の速さ」を、別のものとして測ります。理解は深いのに時間がかかる子は世界中にいて、研究者が『Bright Kids Who Can’t Keep Up(賢いのに追いつけない子どもたち)』という本を書いているほどです。

では、テストの速さを決めているのは何なのでしょうか。

アメリカの大学生253名を調べた研究(Lovettら、2017年)に、はっきりした答えがあります。読解テストにかかった時間を予測したのは読みの流暢さ、つまり文章をすらすら読める度合いでした。頭の処理速度そのものは、時間も正答率も予測しませんでした。

じゅくちょー

変えにくいのは頭の速さ。変えられるのは、読む・書く・決めるの速さです。

なぜ今、時間が足りない子が増えているのでしょうか

お子さんが遅くなったのではなく、試験のほうが速さを求めるようになった面があります。

大学入学共通テストの国語は、本文と設問を合わせた文字数が、初回2021年の約2万字から2025年には約2万5000字に増えました。1分間に400字読める子でも、一度読み通すだけで60分以上かかる計算です。英語リーディングも全体で約6000語あります。

生活の側にも、速さを削る要因があります。高校生の睡眠を7日間5時間に制限した実験では、注意力とともに処理の速さが日ごとに落ち、2晩ゆっくり眠っても戻り切りませんでした(Loら、2016年)。約1万人の9〜10歳を追ったアメリカのABCD研究でも、画面を見る時間の長さと処理の速さには負の関係が示されています。

試験の要求は上がり、生活は速さを削る方向に流れている。以前なら目立たなかった「ゆっくりさ」が、点差として見えやすくなっているのが今です。

速さの正体は、三つに分かれます

「速さ」とひとくくりにせず、三つに分けると、やることが見えてきます。

速さつまずきの見えかた伸ばしかた
読む速さ本文を読むだけで時間が消えるうまい読みを先に聞き、同じ文章を3〜4回くり返し読む
書く速さ書き写しや記述で手が止まる時間を計った書き写しと、書くことを先に決めてから書く練習
決める速さ見直しや消しゴムで時間が消える「見直しは1回」「2分で次へ」という決めるルール

読む速さは、目を速く動かす訓練では伸びません。言葉を知っていること、文の形に慣れていることで決まります。研究で最も安定して効果が出ているのは、大人がうまい読みを先に聞かせ、同じ文章を3〜4回くり返し読み、まちがいをその場で直す方法です(Therrien、2004年ほか)。

書く速さの遅さには、手の動きではなく「何を書くか思い出す時間」が隠れていることが、日本の小学生618名の書字を分析した研究でわかっています。手の運動練習には効果がなく、時間を計った書き写しに効果があることも、まとめの研究で確かめられました(SantangeloとGraham、2016年)。

決める速さを奪うのは、多くの場合、不安です。心理学の注意制御理論(Eysenckら、2007年)では、不安は答えの正しさよりも、かかる時間のほうを奪うとされています。答えは合うのに読み返しが止まらない子は、能力ではなく判断のルールの問題なのです。

家庭でできる練習は、何でしょうか

1分間チャレンジとは、1分間で何字読めたか、何字書けたか、何問解けたかを毎日測り、自分でグラフにつける、『つばさ』がすすめる速さの練習法です。1日10分あればできます。

  • まちがえないことが先。10問中9問合うようになってから、速さをめざす
  • くらべる相手は昨日の自分。グラフが少しでも右上がりなら、伸びている証拠
  • タイマーも記録も本人が担当。おうちの方は、見届け役

時間を計る。すぐに正誤を確かめる。自分で記録をつける。この三点セットは、読み・書き・計算のどれでも速さを伸ばすことが、流暢性の研究で繰り返し示されてきた王道です。

そして、おうちの方にできる一番の応援は、声かけを変えることです。今日から使えるように、表にしました。

言いかえたい言葉代わりに
早くしなさい今日は何字だった?
どうしてこんなに時間がかかるのどこで止まった? いっしょに見よう
○○ちゃんはもう終わってるよ先週の自分とくらべてどう?
もっとていねいに読める字なら十分。次に行こう

不安は速さを奪います。ですから、急がせる言葉を減らすことが、そのまま速さの練習になります。

やらないほうがいいことは、ありますか

あります。しかも、よかれと思って選ばれがちなものばかりです。

脳トレアプリや、目の動きを鍛える型の速読は、他の学習への効果がほぼ確認されていません(GobetとSala、2023年。速読についてはRaynerら、2016年)。まちがいが多い段階で速さだけを求めると、速くて雑になります。睡眠を削って机に向かう時間を増やすのは、処理の速さを削るのと同じです。そして、ほかの子とくらべることは、不安を増やして速さを奪います。

『つばさ』の音読タイムラップとは!?

『つばさ』では、小学生・中学生・高校生に対して、授業の出席ごとに「音読タイムラップ」という課題を課しています。

小中学生は、「昇段式漢字トレーニング」の級ごとの72例文を、第一段階は1分45秒以内で合格としています。2周目となる合格タイムは、10秒縮めた1分35秒。3周目は、もう10秒縮めた1分25秒という合格タイムで音読をしてもらっています。

正確に読めるようになることはもちろん、正確に速くを目標に、音読に合格タイムを設けて生徒たちに挑戦してもらっています。時間を意識することは、並大抵な努力で習慣化することはありません。何回練習する、という回数目標ではテキトーに練習することになりかねません。だからこその、タイムラップなのです。

目で見る、正確に認識する、声に出す、処理速度を上げる。当たり前の閾値がどんどんと上がってきている生徒も、目に見えて出てくるようになってきました。

マイペースは、直すべき欠点ではありません

じっくり考える力は、これから先の人生で必ず武器になります。めざすのは、その力を残したまま、試験という時間の枠の中でも発揮できるようになることです。

読む・書く・決める。三つの速さを、正確さを先にしながら、一つずつ育てていく。半年あれば、グラフは動きます。『つばさ』が読解と音読を学びの軸に据えている理由も、つばさ式読解メソッドとは?に書いたとおり、ここにつながっています。

じゅくちょー

マイペースは、そのまま持っていっていい。速さは、あとから足せます。

速さの土台は、すらすら読める力です。お子さんの読みの現在地が気になる方には、無料の読解チェックをご用意しています。

読解のつまずきチェックの内容を見る

よくあるご質問

半年で本当に変わりますか

生まれつきの処理の速さは、短期間では大きく変わりません。ただ、試験で必要な読む・書く・決める速さは、数週間から数か月で伸びることが示されています。時間を計った読みの練習を9週間続けた大学生の英語の読む速さが、1分間73語から132語に伸びた報告もあります(ChungとNation、2006年)。

見直しが止まらないときは、どうすればいいですか

「見直しは1回まで」「2分考えて進まなければ印をつけて次へ」というルールを、先に紙に書いて決めておきます。時間を計った練習の中で、早く決めても点は落ちなかったという体験が積み重なると、迷う時間が減っていきます。

試験時間を延長してもらえる制度はありますか

医師の診断がある場合、大学入学共通テストには試験時間を1.3倍にする配慮の制度があります。申請には期限と資料が必要ですので、気になる方は早めにご相談ください。研究では、時間を延ばすことと同じくらい、時間の使い方を練習することの効果が示されています。


参考文献

  • Lovett, B. J., Lewandowski, L. J., & Potts, H. E. (2017). Test-taking speed: Predictors and implications. Journal of Psychoeducational Assessment, 35(4), 351-360.
  • Therrien, W. J. (2004). Fluency and comprehension gains as a result of repeated reading: A meta-analysis. Remedial and Special Education, 25(4), 252-261.
  • Eysenck, M. W., Derakshan, N., Santos, R., & Calvo, M. G. (2007). Anxiety and cognitive performance: Attentional control theory. Emotion, 7(2), 336-353.
  • Santangelo, T., & Graham, S. (2016). A comprehensive meta-analysis of handwriting instruction. Educational Psychology Review, 28(2), 225-265.
  • Lo, J. C., Ong, J. L., Leong, R. L. F., Gooley, J. J., & Chee, M. W. L. (2016). Cognitive performance, sleepiness, and mood in partially sleep deprived adolescents: The need for sleep study. Sleep, 39(3), 687-698.
  • Chung, M., & Nation, P. (2006). The effect of a speed reading course. English Teaching, 61(4), 181-204.
  • Rayner, K., Schotter, E. R., Masson, M. E. J., Potter, M. C., & Treiman, R. (2016). So much to read, so little time: How do we read, and can speed reading help? Psychological Science in the Public Interest, 17(1), 4-34.
  • Gobet, F., & Sala, G. (2023). Cognitive training: A field in search of a phenomenon. Perspectives on Psychological Science, 18(1), 125-141.
徳島市で「読解力」を育てる国語専門塾つばさ

この記事を読んだ保護者の方へ

徳島国語英語専門塾つばさは、徳島市で小学生(小4~小6)から「読解力」を育て、基礎学力テスト・上位公立高校受験を経て、大学受験まで一貫指導する専門塾です。