チャンスは、変な顔をしてやってくる|悪い結果が味方になる日
チャンスは、チャンスの顔をしてやって来ません。いちばん嫌な顔で届くことのほうが、多いんです。
「チャンスを掴みなさい」と、よく言われます。
ただ、じゅくちょーは塾で長く生徒たちを見てきて、この言葉には大事な注釈がひとつ抜けていると感じてきました。模試のE判定。定期テストの赤点。苦手科目の答案が返ってきた日。どれも、ついていない出来事に見えます。今日は、その見え方が変わるかもしれない話を書きます。
結論から言うと、伸びる人と伸びない人を分けるのは才能ではなく、悪い知らせを「情報」として読む力だと、じゅくちょーは考えています。E判定の成績表ほど、次に何をするといいかを正確に教えてくれる紙は、ほかにないからです。
なぜ、悪い知らせがチャンスなのでしょうか
宝くじのように光って落ちているなら、誰も苦労しません。本物のチャンスは、もっと地味で、もっとひどい顔をしてやって来ます。
ある有名な音楽会社の創業者は、人生を決めたチャンスが「アルバイトの不採用」だったと語っています。断られた店に、翌日からタダで通い続けた。それが、のちの大きな会社の出発点になったそうです。
学びの世界でも、同じことが起きます。E判定の成績表には、どの単元が抜けているか、どの問題で時間を失ったかが、全部書いてあります。合格していった生徒の多くは、才能があった人ではなく、悪い知らせを情報として読んだ人でした。
心理学の研究でも、近いことが確かめられています。まちがいを避けて答えを眺めるだけの学びより、まちがえてから直した学びのほうが記憶に残りやすい、という整理です(Metcalfe、2017年)。まちがいは、恥ではなく入口なんです。
ついていない出来事が起きた日ほど、一度だけ疑ってみませんか。チャンスの変装かもしれない、と。
同じ教室で、なぜ見えるものが違うのでしょうか
同じ授業を受け、同じ教科書を使い、同じ宿題をやっている。それなのに、伸びる子と伸びない子がいます。この差は、頭の良さよりも見え方の差だと、じゅくちょーは感じています。
心理学に、有名な実験があります。バスケットボールのパスを数えていた人の約半分は、画面の真ん中をゴリラの着ぐるみが横切っても気づきませんでした(SimonsとChabris、1999年)。人は、注意を向けたものしか見えないんです。
伸びる子は、自分の数字に注意を向けています。前回のテストで何点だったか。どの大問で何点落としたか。同じ種類のミスを、何回くり返しているか。自分のまちがいを数えることは、誰にも禁止されていません。それなのに、やっている人はほとんどいません。
数字を見ている人にだけ、「あれ、おかしいな」「ここを直せば一気に上がるんじゃないか」という違和感が生まれます。チャンスの入口は、たいてい違和感です。
「うちの学校じゃ無理」という言葉が口ぐせになると、場所を変えても、同じ言葉が出てきてしまいます。見る場所が、変わっていないからです。同じ教室が、ある人にはただの教室に、ある人には宝の山に見えています。
受験に出ない学びは、無駄なのでしょうか
「これ、受験に出るんですか?」という質問を、じゅくちょーはよく受けます。気持ちは、よくわかります。それでも、手渡しておきたい見方がひとつあります。
あとで武器になるものは、その時は武器の顔をしていません。
歴史が好きで、資料集の隅まで読み込んだこと。英語の歌詞を、意味もなく訳してみたこと。テストに関係ないのに、数学の別解を考え続けたこと。そういう「無駄」は、その場では一点にもなりません。
でも、役に立つかどうかで選んでいるうちは、みんなと同じ武器しか手に入りません。夢中でやった「無駄」だけが、その人だけの武器に育ちます。興味の育ち方を追いかけた研究でも、自分から深めていった興味ほど長続きし、学びを支える力になることが示されています(HidiとRenninger、2006年)。
何年か後、面接で、小論文で、あるいは仕事で。誰も持っていない強みとして、返ってくるんです。
差は、どこで生まれるのでしょうか
もうひとつ。同じ情報を持っている人の間に、差はつきません。差が生まれるのは、みんなが面倒くさがって読まない場所です。
- 問題集の解答の「解説」を、最後の一行まで読む
- 教科書の欄外の注を読む
- 辞書を引いたついでに、隣の単語まで見る
誰でもできるのに、誰もやらない。そこにだけ、まだ誰のものにもなっていない差が転がっています。
インターネットがあれば、調べることは一瞬でできます。それなのに、調べない人は調べない。道具が便利になっただけで、調べる人と調べない人の構図は変わっていないんです。みんなより半年早く知っていること、半年早く始めることは、才能と同じ働きをします。部活の引退を待たずに、入試へ向けた学びを始めた子が伸びるのは、これが理由です。
『つばさ』が読解を全員の学びの軸に据えているのも、「解説を最後の一行まで読める力」が全教科の土台になるからです。くわしくはつばさ式読解メソッドとは?に書きました。
チャンスの扉は、どれくらい開いているのでしょうか
チャンスには、もうひとつ残酷な性質があります。扉が開いている時間が、極端に短いことです。
授業中の「誰かやってみるか?」。先生の「質問ある人?」。発表や委員の募集。手を挙げられるのは、ほんの数秒です。その瞬間に動けるかどうかは、度胸の問題ではなく、習慣の問題だと、じゅくちょーは考えています。
心理学でも、「この場面が来たら、こうする」と先に決めておいた人は、その場面で迷わず動けることが、90件あまりの研究をまとめた分析で確かめられています(GollwitzerとSheeran、2006年)。決めておくことが、体を動かすんです。
普段から小さいことを即決している人は、大きい扉の前でも体が動きます。昼ごはんを10秒で決める。聞かれたことに、その場で答える。くだらないことでいいんです。即決は慣れであり、軽いもので鍛えられます。
今日からできることは、何でしょうか
精神論で終わらせたくないので、今日からできることを三つ、置いておきます。
| 三つのこと | 中身 | 目安 |
|---|---|---|
| 自分の数字を知る | 点数・まちがえた単元・ミスの種類を、手帳の隅にメモする | 1日1行 |
| 頼まれていない学び | 宿題にプラス一問。解説を最後の一行まで読む | 1日5分 |
| 小さい即決の練習 | 挙手・返事・質問。昼ごはんを10秒で決めるのでも | その場で |
頼まれた学びだけをやっていると、出した人の想像の範囲内のことしか起きません。プラス一問の分だけ、想像の外側が開いていきます。
『つばさ』で伸びる生徒の共通項
『つばさ』で例外なく伸びている生徒たちには共通項があります。これまでに書いてきた内容に合致する傾向ですが、本当に些細なことの差の積み重ねです。
- とにかく質問に来る
- とにかく学習計画の相談に来る
- 間違ったところに対して、なぜ間違ったのかを検討する
- 間違った問題を、次間違わないようにするためにはどうすれば良いかを工夫する
- 知らない言葉や単語を、放っておかない
- 発音がわからない単語をスルーしない
などです。
みんなができること。でも、面倒だとやらないこと。凡事徹底。これは、特に勉強だけに限ったことではありませんね。人生において、最も大切なことだとも言えます。だからこそ、学習においても、人より抜きん出た結果が出せるのだと感じます。
保護者の方へ。悪い結果を持ち帰った日は、好機です
昔から「チャンスの女神には前髪しかない」と言います。じゅくちょーに言わせれば、実態はもっとひどい。チャンスの女神は、変装してやって来ます。悪い模試の顔、苦手科目の顔、不合格の顔をして。
だから、お子さんが悪い結果を持ち帰った日は、実はいちばんの好機です。責める代わりに、「ここから何がわかる?」と、いっしょに眺めてみませんか。
光っているものを探すのは、もうやめていいと、じゅくちょーは思います。いま目の前にある地味なもの、ついていないものを、誰よりも面白がった人のところにだけ、「あれがチャンスだった」という答え合わせが、あとからやって来るのです。
悪い結果を持ち帰った日は、責める日ではなく、いっしょに宝の地図を広げる日だと思うんです。
お子さんの答案を「情報」として読む最初の一歩に、無料の読解チェックをご用意しています。
よくあるご質問
「チャンスの変装」とは、何のことですか
チャンスの変装とは、悪い判定や苦手科目の答案のように、一見ついていない出来事の中に「次にやることの情報」が隠れている状態を指す、この記事での呼び名です。宝くじのように光って落ちているチャンスは、ほとんどありません。
悪い結果を見せてくれたとき、どんな言葉が助けになりますか
まず、見せてくれたこと自体を受け取ってみませんか。「見せてくれてありがとう」のあとで、「ここから何がわかる?」といっしょに眺める。点数の高い低いではなく、次の一手が見つかったかどうかを話題の中心にすると、答案が情報に変わっていきます。
即決が苦手なのは、性格の問題ですか
性格を直す必要はないと、じゅくちょーは考えています。即決は生まれつきではなく、軽いもので鍛えられる習慣です。昼ごはんを10秒で決める。聞かれたことに、その場で答える。小さな場面の練習が、大きな扉の前での一歩につながっていきます。
参考文献
- Metcalfe, J. (2017). Learning from errors. Annual Review of Psychology, 68, 465-489.
- Simons, D. J., & Chabris, C. F. (1999). Gorillas in our midst: Sustained inattentional blindness for dynamic events. Perception, 28(9), 1059-1074.
- Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69-119.
- Hidi, S., & Renninger, K. A. (2006). The four-phase model of interest development. Educational Psychologist, 41(2), 111-127.
この記事を読んだ保護者の方へ
徳島国語英語専門塾つばさは、徳島市で小学生(小4~小6)から「読解力」を育て、基礎学力テスト・上位公立高校受験を経て、大学受験まで一貫指導する専門塾です。
