じゅくちょー

「箱の右はしが61だから、61gの卵があるんでしょ?」
今回の基礎学の大問2を解き直した生徒の、素直な一言です。
気持ちは、よく分かります。

箱ひげ図は、教科書が変わって中学校に入ってきた、まだ新しい単元です。

用語は覚えた。図も読める。

でも、「で、結局どっちがいいの?」と聞かれると、答えられない。

そして、だれかに数字を見せられたとき、その数字を信じてよいかも、分からない。

今日は、そんなお話です。

この記事は、令和8年度 第1回基礎学力テスト 数学の問題分析の、大問2の箱ひげ図を読むための別冊です。

図の読み方だけでなく、「読んだあと、どう評価するか」「見せられた数字を、どう疑うか」まで通します。

最後に、今回の問題のA店とB店を、その目で評価し直します。

5教科まとめての雑感は、前の記事にあります。

データを整理するのは、「評価」をするため!?

塾で10人が、100点満点の漢字テストを受けたとします。

点数は、小さい順に 40・50・60・60・70・70・80・80・90・100 でした。

じゅくちょーは、この10個の数を見て、何を決めたいのでしょうか。

知りたいことは、三つです。

知りたいこと決めたいこと見る道具
クラス全体の力は、どのくらい?次の単元に進んでよいかまん中(中央値)
力の差は、大きい? 小さい?全員同じ授業でよいか、分けるか散らばり(箱の長さ)
手当てが要る子は、何点から?だれに補習をするか下の端(最小値・第1四分位数)

つまり、データを整理するのは、数を並べてきれいにするためではありません。

「進めてよいか」「分けるか」「だれを手当てするか」を決めるためです。

度数分布表も箱ひげ図も、この「決める」ための道具です。

10人の点数を、5つの数にちぢめる!?

10人なら一つずつ見られますが、100人、1000人になると、全部は読めません。

そこで、データを小さい順に並べて、5つの値だけを取り出します。

10人の点数を小さい順に並べて、5つの値を取り出す 40 50 60 60 70 70 80 80 90 100 1番目2番目3番目4番目5番目6番目7番目8番目9番目10番目 最小値 40 第1四分位数 60 下半分のまん中 中央値 70 5番目と6番目の平均 第3四分位数 80 上半分のまん中 最大値 100 ↓ この5つの値だけで、図にする 40 50 60 70 80 90 100 (点) 箱の中に、まん中の半分(10人なら5人分)のデータが入っています。

いちばん小さい値(最小値)と、いちばん大きい値(最大値)。

全体のまん中の値(中央値)。10人なら、5番目と6番目の平均です。

そして、下半分のまん中(第1四分位数)と、上半分のまん中(第3四分位数)。

「四分位」は、データを4つに分ける目印、という意味です。

この5つの値を目盛りの上に置いたのが、箱ひげ図。

箱は、第1四分位数から第3四分位数まで。箱の中の線が、中央値です。

箱の両側にのびる線が「ひげ」で、最小値と最大値まで届きます。

箱の中には「まん中の半分」のデータが入っています。10人なら、だいたい5人分です。

「箱・線・ひげ」で、評価の言葉に変える!?

図を見たら、三つの場所を決まった順番で見ます。

見る順番は「箱・線・ひげ」 最小値 いちばん小さい 第1四分位数 下から4分の1 中央値 まん中 第3四分位数 下から4分の3 最大値 いちばん大きい ① 箱=まん中の半分のデータが入る。長さ=四分位範囲 ② 線=中央値(全体のまん中) ③ ひげ=端から端まで(範囲)

一つ目、箱。

箱が長いほど、まん中の半分が広く散らばっている。短いほど、せまい範囲に集まっている。

この箱の長さを「四分位範囲」と呼びます。第3四分位数から第1四分位数をひいた数です。

漢字テストなら、80−60=20点。

二つ目、線。

全体のまん中が何点か。「高い・低い」は、まずここで評価します。

三つ目、ひげ。

端から端まで、どこからどこまで広がっているか。「極端な子がいるか」は、ここで評価します。

では、評価の練習です。

もう一つのクラス、B組の漢字テストは、最小値55、第1四分位数68、中央値70、第3四分位数76、最大値90でした。

まん中は同じ70点。でも、評価はちがう A組 40607080100 箱が長い=力の差が大きい。上の子と下の子で手当てがちがう B組 5568707690 箱が短い=そろっている。クラス全員に同じ授業で進められる 40 60 70 80 100 (点) 「高い・低い」は線で、「そろっている・ばらついている」は箱で、「極端な子がいる」はひげで評価します。

まん中は、どちらも70点。「クラス全体の力」は同じと評価できます。

ちがうのは、箱の長さです。A組は20点、B組は8点。

A組は、まん中の半分でも60点から80点まで開いている。力の差が大きいクラスです。

B組は、68点から76点に集まっている。そろっているクラスです。

ここから、決めることが変わります。

B組は、全員に同じ授業で次へ進める。

A組は、同じ授業では上の子が退屈し、下の子が置いていかれる。分けて手当てをする。

そして、ひげ。A組の最小値は40点。B組は55点。

A組には、補習がすぐに要る子がいる、と評価できます。

「高い・低い」は線で、「そろっている・ばらついている」は箱で、「極端な子がいる」はひげで。

観点を決めれば、評価の言葉は一つに決まります。

気をつけたいのは、「箱が右にあるから平均点も高い」「ひげが長いから成績が悪い」という読み方。

どちらも、図からは言えないことです。

分かることと、分からないこと!?

ここが、今回の基礎学でいちばん大事なところです。

箱ひげ図は、データを5つの値に「ちぢめた」図です。

ちぢめたのですから、消えてしまった情報があります。

箱ひげ図から「分かること」と「分からないこと」 ○ 分かること ・5つの値(最小・第1四分位数・  中央値・第3四分位数・最大) ・範囲(最大 − 最小) ・四分位範囲(箱の長さ) ・だいたいの位置と、散らばり方 ・2つの集団の「比べっこ」 × 分からないこと ・平均値 ・一つ一つのデータの値 ・何個(何人)が何点か=度数 ・箱の端の値のデータが  本当にあるかどうか  (2つの平均のことがある)

平均値は、分かりません。

中央値は「まん中の人の点数」であって、全員の点数を足して割ったものではないからです。

一つ一つの値も、分かりません。

そして、ここが落とし穴。

箱の端の値は、データそのものとは限りません。

20個のデータなら、第1四分位数は5番目と6番目の平均、第3四分位数は15番目と16番目の平均です。

箱の右はしが61でも、「61の卵がある」とは言えないのです。

選択肢に「平均値」「〜がある」が出てきたら、箱ひげ図からは決められないかも、と疑ってください。

「数値は嘘をつかないが、嘘つきは数値を使う」!?

よく言われる言葉です。

数字そのものは正しい。でも、どの数字を選んで見せるかで、人の判断はかんたんに変わります。

たとえば、ある高校の宣伝文句。

「卒業生の平均年収は2,300万円。この高校に入れば、将来お金持ちになれるかもしれません。」

さて、入りたくなりましたか?

中身を見てみます。卒業生は5人、架空の例です。

卒業生年収
Aさん300万円
Bさん350万円
Cさん400万円
Dさん450万円
Eさん1億円(10,000万円)

平均は、(300+350+400+450+10,000)÷5=2,300万円。

計算は、正しい。

でも、5人のうち4人は、450万円以下です。

1人の1億円が、平均を引き上げているだけ。

中央値を見ると、400万円です。

卒業生5人の年収(架空の例):平均2,300万円、中央値400万円 ① 1億円まで入る目盛りで見る 平均値 2,300万円 ↑ 箱(4人分)はここに ちぢこまる 最大値 1億円(1人) 05,000万円1億円 ② 左はしを拡大する(250〜500万円) 1億円まで 300350中央値 400450 250300350400450500(万円) 平均値 2,300万円は、この目盛りのはるか右の外。4人の姿を表していません。

箱ひげ図にすると、箱は350万から450万のせまい範囲にちぢこまり、ひげだけが1億円まで長くのびます。

「平均2,300万円」の景色と、「まん中は400万円で、1人だけ遠くにいる」の景色。

同じ5人です。どちらの数字も、嘘ではありません。

選ぶ数字がちがうだけで、見える姿が変わるのです。

だから、数字を見せられたら、四つ聞きます。

一つ、だれのデータか。卒業生全員か、有名な人だけか。

二つ、どの数字か。平均値だけか、中央値や四分位数もあるか。

三つ、比べる相手は適切か。同じ条件の別の高校と比べているか。

四つ、原因は本当にその高校か。本人の努力や進学先など、ほかの理由はないか。

「卒業生に成功した人がいる」と、「その高校に行けば成功しやすい」は、まったく別の話です。

高校選びも、塾選びも、同じ。

数字に判断を任せるのではなく、数字を使って自分で判断する。

箱ひげ図は、そのための道具です。平均値だけでは見えないものを、見せてくれます。

今回の大問2の選択肢アが「平均値」だったのも、ここが分かっているかを見る問いだと読めます。

度数分布表は、「数えて評価する」道具!?

同じ10人の点数を、度数分布表にもしてみます。

点数人数(度数)
40点以上50点未満1人
50点以上60点未満1人
60点以上70点未満2人
70点以上80点未満2人
80点以上90点未満2人
90点以上100点以下2人

度数分布表の評価は、「数える」評価です。

合格ラインを70点とすると、超えた人は6人。足りない人は4人。

「補習は4人」と、人数で決められます。

いちばん人数の多い階級(最頻値)を見れば、「このクラスのふつうは、このあたり」と言えます。

箱ひげ図の評価は、「位置と散らばり」の評価です。人数は数えられません。

どちらもデータを見る道具ですが、答えられる質問がちがいます。

今回の基礎学の大問2は、(1)が度数分布表、(2)が箱ひげ図。

同じ卵20個のデータを、二つの道具で評価させる問題でした。

今回の大問2を、評価の目で読み直す!?

A店とB店の卵、20個ずつの重さの箱ひげ図から、正しく言えるものを一つ選ぶ問題でした。

まず、目盛りから5つの値を読んで、図に書きこみます。

大問2(2) A店とB店の卵20個ずつ(目盛りから読み取った値) A店 4752.5556063 箱の長さ 60−52.5=7.5 B店 4650.5566164 箱の長さ 61−50.5=10.5 45 50 55 60 65 (g) B店の箱の右はし61は、15番目と16番目の平均。「61gの卵がある」とは言えません。

生徒のシンプルな疑問は、こうです。

「で、どっちの店が、いい卵を売ってるの?」

答えは、「何を『いい』と思うかで変わる」。

観点ごとに評価すると、こうなります。

観点A店B店評価の言葉
まん中の重さ(線)55g56gB店がわずかに重い。ほぼ同じ
そろい方(箱の長さ)7.5g10.5gA店のほうが、重さがそろっている
端(ひげ)47〜63g46〜64gB店は、重い卵も軽い卵もある

「大きい卵がほしい」なら、B店。まん中がわずかに重く、64gの卵も混ざっています。ただし、軽いものも混ざります。

「同じ大きさの卵がほしい」なら、A店。お菓子作りやお弁当で、一個一個の差が出ないのはこちらです。

つまり、「いい店」は、観点を決めて初めて言えます。

ここで、さっきの言葉を思い出してください。

A店が「うちの卵は重さが均一!」と宣伝し、B店が「最大64gの大きな卵!」と宣伝したとします。

どちらも、嘘ではありません。

A店は箱の長さを、B店は最大値を選んで見せているだけ。

宣伝の数字を見たら、「どの数字を選んで見せている?」「ほかの数字も見たら、どう見える?」と聞く。

5つの値を自分で読めれば、宣伝に判断を任せずにすみます。

試験の問題が「正しく言えるものを選べ」と聞くのは、観点さえ決まれば、評価は一つに決まるからです。

選択肢を要約すると、こうでした。

選択肢言っていること読み方
ア平均値について箱ひげ図からは決められない
イB店に61gの卵がある61は箱の右はし=15番目と16番目の平均。あるとは言えない
ウ四分位範囲について観点は「そろい方」。箱の長さはA店7.5、B店10.5で、B店が大きい
エ第1四分位数以外の四分位数は、どちらもB店が大きい観点は「位置」。中央値55と56、第3四分位数60と61。どちらもB店が大きいので正しい

答えはエです。

アとイは、「分からないこと」の側。

ウとエは、観点を「そろい方」と「位置」に分けて見れば、迷いません。

選ぶ前に、「これは図から分かること?」「観点はどれ?」と二つたしかめる。

それだけで、アとイは消え、ウとエは評価の言葉で比べられます。

見た瞬間に答えられるか、三問!?

一問目。中央値が同じ2つのクラスで、箱が短いほうは、どう評価できる?

二問目。第1四分位数が50点、第3四分位数が70点。四分位範囲は?

三問目。中央値が90点のクラスについて、必ず言えることは? 「全員が90点以上」「平均点が90点」「まん中の人が90点」のどれ?

答えは、そろっている(力の差が小さい)。20点。まん中の人が90点。

三問目で「平均点が90点」を選んだ人は、もう一度「分からないこと」の図に戻ってみてください。

じゅくちょー

数値は嘘をつかないが、嘘つきは数値を使う。
だから、箱ひげ図は覚える記号ではなく、数字を使って自分で判断するための道具です。
「箱・線・ひげ」の順に見て、観点を決めて、評価の言葉にする。そこまで言えたら合格です。

大問2以外の解説は、数学の問題分析の記事に戻ってお読みください。

箱ひげ図の問題で迷った答案があれば、公式LINEでの学習相談で一緒に読みます。

ちゃん♪ちゃん♫

徳島市で「読解力」を育てる国語専門塾つばさ

この記事を読んだ保護者の方へ

徳島国語英語専門塾つばさは、徳島市で小学生(小4~小6)から「読解力」を育て、基礎学力テスト・上位公立高校受験を経て、大学受験まで一貫指導する専門塾です。