じゅくちょーの雑談

艱難汝を玉にす!?

じゅくちょー

2023年4月1日となりました。

新年度の始まりです。

今日の授業の中で、小4生の国語の問題で

「艱難汝を玉にす」

という言葉を調べるものがありました。

その言葉の説明をしているときに、

ふとある物語が頭をよぎったので

そのよぎった物語を文章化してみようと思います。

R5年度大学共通テストまで。あと287日!!

徳島県公立高校入試まで、あと341日!!

中学校別:基礎学平均点情報ページは、コチラ

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少女エマの物語!?

エマは都会から来た、次に中1を迎える転校生。活発でありながら毒っ気がなく、柔らかい空気感を持った優しい女の子です。持病の喘息を少しでも緩和させるために、空気の澄んだ地方の片田舎にへと引っ越しをしてきました。今までは、1学年10クラス以上の大きな学校に通っていましたが、転校先は1学年1クラスの小さな学校です。

空気がすごく身体に合ったのか、喘息の症状は大きく和らぎました。そこで、エマは元いた場所でずっとしたかったバスケットボールを我慢していたこともあり、転校先の学校で挑戦を決意します。

ところが、転校先の学校ではバスケットボール部がなく、意気消沈。そんな姿を見ていた転校先の担任の赤木先生は、エマにこう持ちかけます。

「バスケットボールをしたい部員を5人集めてみれば?そうすれば、部活動を新しく作ることができるよ!」

全く新しい環境、全く新しい土地、全く新しい人間関係。普通の人なら少し腰が引けてしまうかもしれません。ですが、エマは好奇心が服を着ているような快活さがあり、そのことに対してワクワクしてくるのでした。

1年生ばかりの新チームで目指すもの!?

小学生の頃にはスポーツ少年団が機能していましたが、中学からはバスケットボールが部活動としてはなくなってしまうその地域。経験者が複数人見つかり、エマは声をかけます。転校生からの誘いとグイグイくるその元気さに同級生たちは少し戸惑いながらも、「喘息を治すために都会から来た」というその背後関係も知ったことから、エマの応援をすることでエマ以外の4名が集まりました。バスケットボール部の発足です。

エマは小さな頃からの喘息持ち。バスケットはおろか、まともに激しい運動をした経験がありません。未経験者ではありますが、エマが部の発起人となったことで、キャプテンを任されます。自分はバスケット未経験者である不安は感じるものの、エマはワクワクしながら部活動の運営やチームを強くしていくために、一生懸命に動き始めます。チームのも目標を「県大会優勝」と定め、みんなを鼓舞していくのでした。

一方、エマのお母さんは、図書館司書として都会では働いていました。娘が元気になり、挑戦をしようとしていることをサポートしようと、組織論やチームづくりに関する本を勧めました。カーネギーの「人を動かす」「道は開ける」「7つの習慣」、ドラッガーの「マネジメント」「ティール組織」「恐れのない組織」などなど、好奇心旺盛であることで読書も大好きなエマは、キャプテンの責任を果たそうと努力を重ねていきます。

事情もあり、親御さんとの連携を密に取っていた担任となる赤木先生は、母親からの報告を受け、エマの成そうとしている役割をサポートすることに全力を注いでいきます。田舎の学校で、抱える生徒数も多くない大らかな土地柄から、赤木先生も部活動の顧問を引き受けました。エマと赤木先生、二人三脚でのチーム作りが始まります。

周囲の仲間が求めていること!?

チームの目標は「県大会優勝」という、分かりやすい成果目標をエマは掲げました。このことから、チームの命題として「勝利」が必須の条件となってしまいます。すなわち、プレイスキルの上達や個々のフィジカルの向上も無視できなくなりました。エマ以外の経験者たちは、その大変さが経験があるがゆえに分かります。何を優先的に行わなければならないかも、自ずと見えています。部員は5名。全員がそれぞれに役割を最大限果たしたとしても、なかなか達成は難しい目標をエマは掲げてしまったのです。

しかしエマはというと、喘息は大きく改善はされたものの体力はなく、試合の半分の時間を走り切るだけで精一杯。経験者とはプレイの質も雲泥の差。エマのミスから失点も多く、明らかに勝利を目指すチーム・結果を求める目標の中においては、エマ自身がチームの弱点となっていました。そんな中で、エマはキャプテンとしての役割を果たそうと、必死になってメンバーたちに「チーム論」を説き、「チームワークの重要性」や「関わりあい方」、「心理的安全性」を担保できるチームをみんなに求め、自身もそのようなチームを作ろうと躍起になっていました。

あるとき、チームメイトは赤木先生へと相談に行きます。

「先生、私たちもやもやしてるんです。エマのことは大好きです。支えたいし、目標も叶えてあげたい。だからこそ、今チームが大切にしなきゃいけないのは、『エマ自身のスキルアップ』じゃないでしょうか?エマが身を粉にして学んでくれてることは本当によく分かるんですけど、エマが学ぶべきなのはバスケットの上達方法とは思いませんか?」

赤木先生も、そのことは理解できています。実は、先生自身も若かりし頃はバスケットをしており、エース選手でした。かつては、その自分勝手なワンマンプレーでチームの輪を乱し、それでも県大会の決勝戦までは自分の力で勝ち進むことができました。しかし、その決勝戦前日の練習の際に今までのチームの不満が爆発し、チームは空中分解状態で決勝戦に挑むこととなり、ダブルスコアで敗退したという苦い経験が赤木先生にはありました。

「そうだね。君たちの感じるもやもやはすごく理解できる。エマは『県大会優勝』という成果や結果を求める目標を立てたよね?でも彼女の行動の根本は、『いいチーム作り』のために全精力を傾けてる。じゃ、この二つは相反するものなのかな?どっちもを叶えることはできないのかな?」

「先生は、甘いと思います。現に、前の練習試合もエマがもう少し頑張ってくれれば勝てた試合だったと思うんです。でも、エマのせいにはしたくないから、みんなでフォローし合っていい試合にはなったと思うんです。私はチームとしてはエマの働きもあって、すごくいい雰囲気なことは確かだと感じますが、結果を出せるチームには精神論やチームワーク論ではなっていかないんじゃないかともやもやするんです。先生はどうお考えですか?」

「うん。じゃ、こう考えてみよう。仮にこのことをエマとも話し合って、チームとしてエマの選手としてのスキルをアップさせる方向に舵を切ったとしよう。そして、エマも強くなりいよいよ県大会優勝というゴールが狙える位置まで来たとする。で、いざという試合で君が原因でチームが負けたとしよう。そのとき君たちに何が残るだろうか?」

「。。。」

「結果を求めて頑張った先にあるもの。人としてのあり方を求めて頑張った先にあるもの。どちらとも、得難い尊いものだと思うんだ。でも、どれだけ想いを込めても、叶わない結果や成果という目標は人生には間違いなくある。失敗という言葉はちょっと違うと思うけど、それでも困難や大変なこと、本当は経験しなくてもいいような辛いことだって人生に降りかかってくる。それでも、『艱難汝を玉にす』の言葉の通り、そんな苦難をいかに受け止められるか次第で、立派な人としての磨かれ方が決まると思うんだ。そして、一人だけで受け止めるのではなく、そのときに誰が自分の周りにいるかどうか。それが一番大事なことなんじゃないな、って先生は思ってる。だから、エマは間違ってない。でも、君たちも間違ってるわけじゃないんだ。エマだって、自分にプレイヤーとしての価値がないと、みんなと比べて本当は誰よりも感じてる。自分が必要とされていないかもしれないと、誰よりも不安にもなってる。でもそれは、自分が愛されているよりも深く、みんなを愛しているだけ。間違っているのではなく、価値観の順番が違うだけなんだよ。みんなも思い悩んで傷ついてるかもしれないけど、エマもみんなも大切なものを守ろうとしただけ。イラっとしたのではなく、分かり合えなくて寂しかっただけじゃないかな?お互いを責めなくてもいいよ。みんなも、自分を、お互いを責める前に、許し合う余地はないか、理解し合う余地はないか、考えてみない?エマは、目標の先にあるものを大切にしてるだけ。君たちは、エマの大切にしたいことの手前にある目標を、必死で叶えてあげようとしてるだけ。素敵なチームじゃないか。そのことをちゃんとお互いに伝え合わなきゃもったいないよ。」

「もう、先生は変な人ですね(笑)」

その後、エマと赤木先生とチームメイトはたっぷりと話し合いました。エマはプレイヤーとしてチーム一番を目指す方向ではなく、チームの中で誰よりも走れる選手を目指すことになりました。そして、エマが求めた人としてのあり方を大切にした最高のチームができました。中3となり、最後の総体では惜しくも県3位という結果となりましたが、どのチームよりも泣き喜び、弾ける笑顔で表彰されました。

エマは晴れて健康な身体を得ることができ、地元であった都会の大学へと進学。心理学を専攻し、自分の一番大切にしたいことである人の気持ちをおもんばかるスキルを最大限発揮できる企業の人事コンサルタントとなりました。地方の片田舎での、傷つき傷つけ合い、自分を卑下し相手を恨み、許し許し合い、相手の気持ちをうかがい自分の心の声と真摯に向き合ったからこそ、人と人を繋ぎ、人の想いと想いを繋ぎ、誰のために自分の力を使えば良いかが分かる人間となったのです。

どれだけ傷つき不格好で綺麗なものでなくとも、その今までの全ての経験があったからこそ、今の自分があるとエマは考えています。

エマは言います。

「何があっても、自分の心の底から大切にしていることを大事にできる自分であり続けてください。でも、変わりたくない部分を変えなくて済むように、変えたくない部分を変えないで済むように、その他の部分は柔軟に変えていけばいいんです。私は、何か大きなことを成し遂げたいという願いはありません。側から見れば何がしたいのか分かってもらえないような人間です。でも、そんな私が求めている生き方があります。それは『鎹(かすがい)』になることなんです。『よき鎹となる』こと。私がいることで、人と人との関係性が繋ぎ止まって円滑になる。その光景を見ることが私の人生で最も充実しているときなんです。私は、『何かをしたい人生』ではなく、やっぱり『どうありたい人生』がいいんです。みなさんも、楽しんで!どうせ全ては気持ち次第でプラスに持っていけちゃいますから(笑)」

ちゃん♪ちゃん♫

たろー

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